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 近年の分子生物学やゲノム解析の発展によって、細胞内にある構成要素や、その間の相互作用について 膨大な情報を得ることができるようになっています。 一方で、その構成要素が明らかになるということと、生物という複雑なシステムが理解できるということには、大きな隔たりが存在します。 例えば、多細胞生物の発生過程では、1つの受精卵が次々に分裂し、多様に異なるタイプの細胞へ分化することによって、複雑な体制を持つ個体が形成されます。 しかしながら、細胞内の化学反応がどのように組み合わされば、そのような込み入った過程が、常に存在する「ゆらぎ」の影響下でも安定に進行するかは、大きな謎として残されています。 あるいは、細胞の外部から取り入れられた糖などの栄養物質は、細胞内の代謝ネットワークによって変換され、ATPなどのエネルギー物質やアミノ酸などの細胞構成要素が生成されますが、 どのような制御によって、その代謝の流れが途切れたり、淀んだりすることなく維持され得るかという問題は、未だ解決されていません。

 私は、生物というシステムの理解を目指しています。そのために、その構成要素など細部の情報に依存しない、生物システムが持つ一般的な性質を、 実験と計算機シミュレーションの双方から抽出することによって、そのメカニズムの理解を試みています。現在は特に、代謝・分化・進化という3つのシステムに注目して、 数理モデルの構築/解析と、構成的実験による探求を行っています。また、そのために必要な実験技術や解析アルゴリズムの開発を行っています。

 さらに、生物というシステムの工学的応用の研究を行っています。例えば、微生物を用いた物質生産を改良するためには、代謝や適応を司るシステムの正しい理解と、 それを改変する戦略が必要となります。数理モデルと実験的検証を組み合わせることにより、合理的な細胞デザインのためのプラットフォーム構築を目指しています。 また、生物システムが持つ安定性や進化可能性といった性質を理解することは、我々が知る既存の人工システムに、生物が持つ柔軟性を賦与する可能性をもたらします。 そこで、生物のシステムとしての理解を踏まえた上で、Bio-Inspiredな新たな情報技術の開発を目指しています。

細胞分化の動的モデル:幹細胞カオス遍歴仮説

多細胞生物がどのように、多様なタイプからなる細胞社会を安定に形成しているか、数理モデルにより解析します。

ゲノムスケール代謝モデルを用いた代謝予測

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数百程度の反応を持つゲノムスケール代謝モデルを用いて代謝フラックスの予測を行い、工学的な応用を目指します。

人工進化実験における表現型・遺伝子型解析

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人工進化実験におけるゲノム配列と表現型の変化を網羅的に解析し、適応・進化のメカニズムの理解を目指します。

マイクロアレイの高精度解析アルゴリズム開発

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プローブとターゲットの相補鎖形成の物理モデルを用いて、マイクロアレイの高精度解析アルゴリズムを開発します。


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